視察先 :茨城県阿見町
視察内容:「議会モニター制度」「あみ議会報告&交流会」について
1.はじめに
鎌ケ谷市は、千葉県の北西部、北総台地のなだらかな緑の大地の上に広がる総面積21.08平方キロメートルの都市です。市内には、東武野田線(東武アーバンパークライン)・新京成線・北総線・成田スカイアクセス線の鉄道4線と道路網が発達しており、都心から25キロメートル圏内にあることから、首都近郊の住宅都市として発展してきました。
1971(昭和46)年9月1日に人口44,760人を擁して、県下24番目の市となりましたが、その後の着実な人口増加により平成8年には10万人を超え、令和元年5月1日現在で、110,001人(住民基本台帳人口)となっています。こうした発展の中にありながら、豊かな農地や緑の環境をもち、梨の名産地としても全国にその名を知られています。
2018(令和元)年5月から定例会の回数を年1回とする通年議会を導入し、さらなる議会機能の強化や、大規模災害時等の緊急時における迅速な対応、二元代表制の観点から議会の判断で本会議を開催する権利を確保するなど、過去にないような議会の活性化を図っています。
この度、本市の議会運営委員会行政視察の選定に際し、鎌ヶ谷市の先進的な取り組みについて詳細を調査し、現地にて移行後の状況についてご教示賜ることを打診したところ、快く受け入れていただきましたことから現地視察となったものです。
鎌ヶ谷市ホームページ及び配布資料より抜粋
https://www.city.kamagaya.chiba.jp/
2.視察項目
(1) 「通年議会」について
鎌ヶ谷市議会通年議会
⑴ 導入の目的
議会が長期間にわたり活動能力を有することで、議会機能の充実強化を図ります。また、大規模災害時等の緊急時において迅速に対応できる体制を整えます。そして、二元代表制の観点から議会の判断で本会議を開催する権利を確保します。
⑵ 会議の招集及び会期
定例会の招集回数を毎年1回とします。会議は毎年5月に市長が定例会を招集し、
議会が会期を決定します。その後の会議はすべて議長が開くことになります。
会期は、毎年5月から翌年4月までを基本とします。会期中は、年4回(6月、9 月、12月及び3月)開かれる定例の会議で、議案等の審議や一般質問を行います。この他必要に応じて臨時に会議を開きます。

(写真)鎌ヶ谷市議会 中村潤一議長ごあいさつ
小易和彦議会運営委員長のご説明
⑵ 質疑の主な内容
① 通年議会の効果(議決の迅速化・専決処分減少・定例会回帰短縮等)
→議決の迅速化の効果あり
子育て給付金支給の議決が早く、スムーズに進んだことなど実績あり
② 臨時議会にあたる会議開催の基準
→基準はないその都度執行部と調整
③ 執行部の事務機能及び行政サービス提供低下等の変化
→増大することはない
④議会事務局や執行部職員の業務量増大等の懸念
→業務量の変化特に増大していない
⑤ 議会活動と地域活動のスケジュール調整等困難事例
→公務優先により、議会活動に支障なない
⑥議員の市政課題研究のモチベーション及び住民の対議会の関心の高まり
→年間を通した議会活動による環境整備をした結果、議長権限で議会開催可能
大規模災害等による議会開催の遅延なし
3.資料
鎌ヶ谷市議会だより(2025年1月1日発行 新春号)より議会の取り組み(抜粋)
⑴ 主権者教育
小学生以上児童生徒の議場見学実施
小中学生向けのキッズページ作成
⑵ 子ども議会の協力
子ども議会とは市内の小中学生に議会及び行政の仕組みを理解し、関心を持ってもらうことを目的として教育委員会が主催する事業です。生徒からの市政に関する一般質問に対し市や教育委員会等から答弁が行われます。実際に生徒が行うことで主権者教育が推進されることから、議事進行などの運営を協力しています。
https://www.city.kamagaya.chiba.jp/gikai/gikaidayori/gikaidayori2025.files/R7sinnen.pdf
4.所感
本市における議会改革のテーマとして、これまで俎上にあがってこなかった「通年議会」につきまして、今回の行政視察を契機に議論を始めていく必要があります。全国的には、まだ様々な理由から導入されていない自治体がほとんどで、県内でも今年度から酒田市が導入しているにすぎません。導入した自治体のメリットや実施に至っていない自治体でのデメリットなどの議論について、本市議会においても調査研究を重ねていくことが重要であると思いました
通年議会にはメリットとデメリットがあります。市民の政治参加、議会への関心を高めることにつながるのかどうかという点を基本に議論することが必要だと思いました。
メリットとして①市長の専決処分がなくなる②議長が本会議を招集できるということがあります。経費もかからないということもあります。
一方、デメリットは、市民の議会や市政への参加機会を減らすことにつながる可能性があります。議会では、会期中に一度、議決・決定した事柄については再度の審議はしない、とする「一事不再議の原則」があります。現在、年4回の議会ごとに、多くの市民が、請願、陳情を提出、口頭陳述を行うなど、市民の議会、市政参加の大きな機会となっています。請願者の参考人招致による請願の趣旨説明など口頭陳述は、本市議会の進んだ制度のひとつだと思います。通年議会あるいは年間2回の議会となった場合、たとえば、請願、陳情は、年に1回か2回しか提出できなくなる可能性があります。同じような内容で市民が提出した請願、陳情が「一事不再議」として、議論されないということも否定できません。現実に、通年議会制をとっている他県の市議会などでは、同様の請願などは一事不再議の扱いとされています。識者は、「一事不再議とされれば、請願、陳情が激減する可能性も否定できない。これは、市民から議会を遠ざけることにもつながる」と指摘しています。
本市においても、現状では休会中の請願継続審査において採択された案件が、本会議における質疑討論採決が次の定例会まで待たなければならないこと、つまり関係機関への意見書の提出が迅速に行われないことも大きな課題です。通年議会において、採択の時間が早まることは、市民の議会に向けた期待度が大きくなり、議会参加につながっていくことになれば、通年議会の導入の成果が出てくると思いました。
5.むすびに
今回の行政視察地となった鎌ヶ谷市は、自分にとって初めての訪問であり有意義なものとなりました。
最後になりましたが、市議会事務局様には、大変御多忙のところ快く受け入れをいただきましたこと、衷心より感謝申し上げます。ありがとうございました。

(写真)鎌ヶ谷市議会議事堂にて(筆者は右端)