視察先 :和歌山県橋本市
視察内容:農業振興条例について

感想・所見など

1.はじめに

橋本市では、令和2年12月に農業振興条例を制定、令和3年4月から施行して、農業振興条例関連補助金を市独自で農業に積極的に投入するなど、先進的な農業振興を果敢に行っておられます。

橋本市農業振興条例に基づき、橋本市産農産物のブランド強化や遊休農地の拡大防止、農業経営安定化などを支援し、農業を積極的に振興していくための補助制度を設けています。

橋本市は、年間平均気温14℃の温暖な気候や紀の川の恵みを活かして柿、かんきつ、葡萄等の果樹栽培や、水稲の栽培が盛んに行われています。さらに最近では、高野山麓精進野菜をはじめとした、減農薬で栽培された野菜の栽培も徐々に増えてきており、さまざまな農作物が栽培されています。立地条件も大阪・奈良の県境に位置しており、交通アクセスも電車一本で大阪の中心部まで行くことができます。

また、橋本ふるさと便や農作物インターネット販売促進事業など、農作物を送る際の送料補助や販売手数料を一部補助といった補助金制度を備えており、新規就農者も参入しやすい環境が整っています。

(橋本市概要)

橋本市人口 59,178人 20243.31現在
第一次産業就業人口 950
2024年度一般会計当初予算 29,709,839千円
議員数 18人 議員報酬月額 440,000円 政務活動費月額 20,000
特産品 平核無柿 富有柿 巨峰 はたごんぼ 恋野マッシュルーム
高野山麓精進野菜 たまご 手づくりのへら竿など

 (写真 橋本市役所庁舎)

2.具体的な取り組み 

⑴産地パワーアップ事業(同一品種の改植)補助金

 この事業は、老木を改植する際に、成木までの期間の補助を行う事業です。本事業の実施には、取組農家5戸以上または1ha以上の実施面積が必要、改植を実施する園地は、1カ所あたり地続きでおおむね2a以上であることが必要で、取組目標(販売額の10%以上アップ)を設定することが必須です。
県補助額の2分の1 実質6分のⅠ

①ミカン類
みかん [宮川、興津、向山、林]、 中晩かん類 [清見、不知火、はっさく、ポンカン、じゃばら、ゆずに対して、10aあたり45万円

 ②主要果樹類
うめ [古城]、 かき [富有]、 もも [日川白鳳、白鳳、清水白桃、川中島白桃]、すもも [大石早生、サンタローザ、ソルダム]、 キウイフルーツ [ヘイワード]、 びわ [茂木]に対して10ああたり39万円

③さんしょう [ぶどうさんしょう]にも一定の補助

⑵農業用機械導入支援事業補助金 (20247月から 新規事業)
この事業は、認定農業者や認定新規就農者が機械導入の際補助を行い、補助率は、取得額の3分の1(限度額20万円)となっています。具体的には、剪定枝の粉砕に使うチッパーなど30万円以上の農機具取得が条件となっています。軽トラックなどの汎用性の高いものは、対象外です。

⑶経営継承支援事業(和歌山県経営継承応援事業の市単独かさ上げ)補助金
20247月から新規事業)
親元就農の農業者の経営継承を支援して、経営開始資金を受けていない60歳以下の農業者に対し、100万円を支援する事業です。

⑷収入保険・果樹共済加入事業 
果樹共済加入者の共済掛金及び賦課金の3分の1補助 収入保険加入者の保険料及び付加保険料の掛け捨て部分の3分の1補助
今シーズンの本市のさくらんぼは、地球温暖化による著しいダメージを受け、双子果が多く発生し、全体的に高温障害で収穫できなくなるなど大凶作となってしまいました。被災された農家の経営を大きく収入減となった場合、収入保険や果樹共済は加入が不可欠の状況にあります。一方で、掛金や料金は掛け捨て部分が大きいため、こうした3分のⅠ補助があれば、非常にありがたいと思われます。早急に検討すべきです。

 ⑸認定農業者基盤強化事業  詳細略

(写真 行政視察概況)

3.その他ご説明いただいた先進的な事

⑴橋本ふるさと便事業補助金(橋本市単独 予算約100,000千円)
この事業は、指定事業者が生産・販売する農産物を消費者が購入し、その消費者が依頼する送付先へ指定事業者が発送する際の送料を橋本市が全額補助する制度です。消費者の皆さんの負担となる送料を無料にすることで、農産物等の需要が増加すると共に、全国のご家族・ご友人に送っていただくことで橋本市産農産物を橋本市民らが一丸となってPRし農業者の販路拡大と所得向上を図ることを目的としています。
本市のさくらんぼをはじめとする農産物の送料が無料となれば、ますます消費者である市民と農家が強く結びついて、贈答用農産物の需要を拡大していくことはまちがいありません。すぐにでも検討すべき事業ではないでしょうか。

⑵ 農産物等インターネット販売促進事業補助金(橋本市単独)
この事業は、市内農業者が自ら生産した農産物・加工品を市が指定するオンラインショッピングモールを活用して販売した場合の販売手数料を補助する事業です。近年、インターネットを活用した農産物の販売、いわゆる「Eコマース(EC electronic commerce)」による販売実績が急増しています。橋本ふるさと便と併用することで販路を開拓し、全国にリピーターとなるお客さまをつくり、農業者の持続的な所得向上を目的とする事業です。
本市のふるさと納税の受託農家が、特産品の重要なポジションを担っていただいていることを踏まえ、本市の中小・零細農家がインターネット販売をして、持続的な所得向上のために、この事業に関しても今後検討すべき事業ではないでしょうか。

4.所感

市民・農家・行政の3者がしっかり連携して、まちを挙げて農業振興を推進していくすばらしい条例を制定されました。これを契機に①市民の目に触れるのぼりの設置②防災など農業の多面的機能を市民に理解していただく③市民が市外のお客様に農産品を送り、またふるさと納税で返礼品を送り、さらにインターネット販売等に市のチラシを同封し、リピーターになっていただく④そのリピーターが観光で橋本市を訪れ、収穫体験をしていただく⑤この好循環で商工業製品にも経済効果が波及する このようなすばらしい取り組みを続けておられます。
本市のさくらんぼのまち寒河江推進条例を今後具体的施策で推し進めていくためのヒントをいただいた気がいたしました。

5.むすびに

今回の行政視察を契機として、自分なりに調査研究を続けていく決意を新たにし ております。
先日の議会で議案となった本市の「さくらんぼのまち寒河江推進条例」に基づく具体的施策について、2024年 6月さくらんぼ議会の本会議一般質問で、市長に所見を聞く機会がありました。詳しくは、インターネット中継や議会会議録をご覧になっていただければ幸甚です。市民の皆様の声を私なりにまとめて、ご提言したものです。市民に広く、条例を知っていただくとともに、条例による市民参加、協働参画をさらに進めていく絶好の機会です。①から③までは、簡単にまとめると、以下の内容です。

①さくらんぼマラソンが5月になり、さくらんぼの旗の掲揚、さくらんぼ音頭のパレードや東西に分かれての大綱引きがなくなった現在、6月の第3日曜日の記念イベントがさくらんぼフェスティバルとなりました。市民の市民による市民のための「寒河江市さくらんぼの日(6月第3日曜日)」記念行事については、6月を推進月間としているとのことでしたが、自転車やウォーキングなど毎週実施されているものの、市民参加があまりなくなったと言われています。

②本市のさくらんぼ栽培で顕著な功績のあった偉人を称える「さくらんぼとともに生きる(仮題)」ドキュメンタリー映画の制作について、後世に残していくことも重要です。本市のさくらんぼの歴史については、故宇野啓先生が執筆発刊されたものに全体的に集約されておりますが、後世に伝承できる貴重な資料について、特に顕著な功績のあった偉人を称えるために、過去・現在・未来のさくらんぼのまちを映像で残してはいかがでしょうか。今後さくらんぼ会館において整備が期待されるシアターで、本市の歴史文化振興検討委員会のご賢察等を踏まえ、ドキュメンタリー映画の監督を招聘し、作品を制作したり、全国の関心を持つ方々のおチカラをお借りしまして、作品を公募し、優秀作品に懸賞金を授与するなどの企画をしてはいかがですか。

③「さがえさくらんぼの歴史」を後世に伝承する動画制作について、慈恩寺テラスで毎日上映しているプロジェクションマッピングは、わかりやすいナレーションと美しい映像で訪れたものにタイムスリップしてしまうような驚きと感動を与えておりますが、さくらんぼの歴史についても、県と連携して発刊予定の記念書籍を映像化するなど、観光客にわかりやすいガイダンス機能を施して、後世に伝承する作品を制作してはいかがでしょうか。

市民の皆様の声を私なりにまとめて、ご提言したものです。市民に広く、条例を知っていただくとともに、条例による市民参加、協働参画をさらに進めていく絶好の機会です。

今回行政視察を踏まえ感じたことは、橋本市の先進的な市独自事業を本市でも前向きに検討すべきと思いました。財政的な問題や他産業とのバランス、他自治体の実施状況など、様々検討すべき項目はあるかもしれませんが、条例をスローガン、絵にかいた餅にしないようにするため、スピード感をもって進めていく必要があると痛感しました。

最後に、この度の本市議会総務産業常任委員会行政視察に際しまして、市議会議長はじめ事務局の皆様、担当部局の課長はじめ担当の皆様に心から感謝申し上げます。ありがとうございました。