視察先 :和歌山県紀の川市
視察内容:フルーツ・ツーリズムについて

感想・所見など

1.はじめに

①美しい自然と豊富な農作物です。北部に和泉山脈、南部に紀伊山地を控え、これらの間を東西に市名の由来でもある紀の川が流れています。さらに南部からは貴志川が合流し、こうした水辺環境と調和した街並みが形成されています。また、温暖な気候と紀の川がもたらす肥沃な土壌を最大限に利用して、野菜、果物など多種多様な農作物を生産しています。農業産出額全体では和歌山県内1位を誇り、トップブランド「あら川の桃」をはじめ、はっさく、いちじく、柿、キウイフルーツ、いちごなど四季折々の果物が収穫できる全国有数の果物産地です。さらに充実した加工品も数多くあり、安心と本物にこだわった品質で高い人気を集めています。

②伝統ある歴史・文化です。
紀伊国分寺跡の史跡、粉河寺、鞆渕八幡神社、三船神社をはじめとする文化財は、幾世代にもわたり大切に守り伝えられてきた郷土のかけがえのない宝です。また、紀州三大祭の1つである粉河祭をはじめ、まちを挙げてのまつりは、地域に活気を生み出しています。さらに、江戸時代に世界で初めて全身麻酔による乳がん摘出手術を成功させた華岡青洲など、世界的な偉人を輩出しています。

③至便な立地条件です。
関西空港のある泉佐野市に隣接していることから大阪府にも近く、海外とのアクセスも良好です。今後さらなる拡大が予想される訪日外国人旅行市場や海外への農産物の輸出についても、経済活性化への大きな機会と考えられます。加えて、2014年の京奈和自動車道の開通により、奈良県・京都府へのアクセスが改善され、2017年には京奈和自動車道と阪和自動車道が直結し、アクセスがさらに向上しました。

④議長のごあいさつにありました今後トンネル整備が行われれば、大阪から10分の時間で移動が可能となる夢のような計画があるそうです。

紀の川フルーツ・ツーリズムは、2014年に産学官、市民一体となって立ち上げた、フルーツを使ったまちおこしです。2016年より「一般社団法人 紀の川フルーツ・ツーリズム」として法人化し現在に至っています。

この度、紀の川市行政視察を機会に、760人目のLINE友達追加をさせていただき、SNSでもつながらせていただきました。

(写真 行政視察にて議長ごあいさつ)

2.具体的な取り組み

紀の川フルーツ・ツーリズムは、フルーツを使ったまちおこしで、当初はフルーツ・ツーリズム 研究会・協議会でした。200名に及ぶメンバーが集まって、月に一度ワークショップを開き、各チームがフルーツについて学び、料理を作ったり、体験イベントなどを行ってきました。その中からは、「ぷる博」、「フルーツカレー」や「フルーツの被り物」など商品化しました。また季節を感じる「ふるうつ茶会」などの取り組みが生まれました。2016年より「一般社団法人 紀の川フルーツ・ツーリズム」として法人化し現在に至っています

⑴まちづくりカレッジ
2017年から毎年開催している「ぷる博」など、紀の川市のフルーツを使った地域活性化の取り組みを行なっている「紀の川フルーツ・ツーリズム」が、まちづくりを実践しながら学べる講座を開催する講座で、毎月日曜日の全8回。 座学やフィールドワークでアイデアを出し合い、実際に活動も行いながらまちづくりを考える実践型まちづくりカレッジも毎年開催されています。
本市のさくらんぼ大学の発展形もここにあると思いました。

⑵ぷる博
ぷる博は、フルーツをテーマにした体験を集めた博覧会です。フルーツの「ぷるぷるっとした」食感や味をイメージして名づけました。フルーツを食べることはもちろん、見た目の綺麗さ・可愛さや、食欲をそそる香り、手触り、そして体験をおこなってくれる主催者(仕掛人と呼んでいます)の、お話などすべてを五感で感じていただくことができる体験催しで、フルーツの良さを知っていただき、フルーツを大好きになってもらえるようなイベントです。 仕掛人は、農家をはじめ、フルーツを使った食品を作る事業者や、市民が手作りで催しを考え主催します。美味しいフルーツはもちろん素敵な出会いが待っています。あなたもぷる博に参加して、紀の川市民の果物を愛する気持ちをいっぱい、受け取ってください。
市民主催の博覧会となったビッグイベントに大きな驚きと、こうした愛らしいアプローチが、たくさんのファンを獲得していると痛感しました。

⑶紀の川ぷるぷるファンクラブ
このクラブは、紀の川市のことが大好きな人のためのファンクラブで、紀の川市の魅力を発掘・発信し、ファンの輪を広げることを目的としています。特典等について、ぷる博でファンクラブマークがある催しへの参加時に、特典がある場合があります。

(写真 紀の川市内を周遊する地図)

 3.その他、先進的な事業

⑴フルーツプロダクト
①桃を使ったハンドクリーム開発
一般社団法人紀の川フルーツ・ツーリズムでは、紀 の川市のフルーツの味や香り、楽しさ面白さを感じることができる商品を市民の力で開発してきました。その一つが「桃のはんどくりぃむ」これは、「あら川の桃」で人気の紀の川市の若桃のエキスを配合。保湿成分にも桃果実を使っており、爽やかな香りを併せ持ったハンドクリームです。今回、参加者全員にそのサンプルをいただいてきました。感想としましては、大変いい香りで、肌にしっとりとなじむとってもいいハンドクリームです。

②ジャム
まもなく販売開始となる「ぷるぷるジャム」美味しい地元特産物をたっぷり使用し、こだわりのレシピで作ったとっておきのジャム。お土産用として最適だということです。

③桃の羊羹
今回の参加者全員にサンプルをいただきました。大変美味しくいただきました。

⑵新開発情報

①桃のクラフトビール販売
紀の川市産の桃をふんだんに使用した「ももエール」は、フルーティーな香りと、ほんのり香る桃の甘さがマッチしており、紀の川市の新たな名産品として大変好評です。今年からラベルデザインを一新!紀の川市出身のデザイナー岩田直樹氏に作成していただきました。SDGSへの取り組みの一環として、規格外の桃を使用しています。数量限定、市内のみの販売ですので紀の川市を訪れないと味わえないプレミアムな商品です。商品名:「紀の川ももエール」発売日:2024年82日(金)価格:税込600円(330ml

②第16回 紀の川市桃源郷ハーフ­マラソン開催
2024年4⽉7⽇(⽇)午前9時頃〜正午頃まで 市⺠体育館周辺については、午前8時頃から交通規制されて実施されました。
本市のさがえさくらんぼマラソンは、48回を数える全国最長レベルの大会ですが、フルーツツーリズムの推進には欠かせないイベントであることに、自信と確信を持ちました。

4.所感

私は、6月定例会本会議一般質問の中で、県産果樹の情報発信施設として県が進めようとしていたフルーツ・ステーション整備計画(素案)の見直しによる影響について、市長に本市の立場を質しました。具体的なやりとりは、本市議会ホームページからご覧いただきたいと思いますので、ここでは要旨のみ抜粋します。

県では、消費者に実際に本市をはじめ県内のフルーツ産地を訪れてもらい、農業体験や旬のフルーツを使ったスイーツなど様々なフルーツの楽しみ方や、それを通した産地・生産者との交流等を経験する「フルーツ・ツーリズム」を推進しています。 本県の「フルーツ・ツーリズム」の推進に当たっては、県内の果樹園や飲食店を始めとしたフルーツを楽しむための目的地が充実し、魅力的であることが重要です。山形県の旬のフルーツやその加工品を飲食することはもちろん、収穫や加工の体験、栽培方法や歴史の学び、生産者との交流など、山形でしか味わえない様々なフルーツ体験ができる場所を創出することによって、観光客に地域のフルーツを深く知ってもらい、ファンになってもらうことを目指しています。このため、フルーツを楽しめる様々なサービスやイベントが提供され、特にその地域の特産フルーツについて理解を深めることができる誘客と情報発信の場を「フルーツ・ステーション」と位置付け、県内各地の「フルーツ・ステーション」を巡る観光旅行の促進に取り組む計画でした。

こうした動きを通して、さくらんぼを始め、西洋なし、すいかやメロン、もも、柿など、地域を代表する主要なフルーツを発信する場が県内各地に広がり、ネットワークを形づくることで、あたかも県全体がフルーツをテーマにした「体験型ミュージアム」のように、県内の季節ごとの様々なフルーツを認知する場として機能し、消費の拡大と産地への回遊に寄与することが期待されます。ステーションは、県内各地で、既存施設の機能拡充や、期間限定での設置といった、多様な形態で設置されることを想定します。設置や運営も、官民を問わず、創意工夫を活かして誘客や情報発信を行う意欲のある主体が担うことが期待されます。山形県での「フルーツ・ツーリズム」を通した様々な体験価値を通じて旅行者が山形のフルーツのファンとなり、自ら発信することによって、「フルーツを楽しむなら山形県」というブランディングが強化されることが期待されます。

県では、フルーツを消費地で購入するだけでなく、実際に山形県の産地を訪れ、農業体験や旬のフルーツを使ったスイーツなど様々なフルーツの楽しみ方や、生産者との交流等を経験できる、山形のフルーツ産地ならではの観光の仕方、いわゆるフルーツツーリズムを推進してきました。具体的には、「さくらんぼを核とする県産フルーツの情報発信実行計画」に基づき、消費者が本県を訪れ、様々なフルーツの楽しみ方や生産者との交流を経験する「フルーツツーリズム」の推進と、その目的地となる「フルーツ・ステーション」の県内各地域への創出とネットワーク化に向けて取り組んでいます。その一つに、県内各地域の資源や人材を活かしたフルーツ・ステーション創出の取組みを促進するため、各地域でのフルーツ・ツーリズムの活性化やフルーツ・ステーションの創出とネットワーク化について検討を行う場として「フルーツ・ステーションネットワーク推進プラットフォームを設置する計画でした。

こうした計画が、白紙になってしまったことは、実に、県民から期待されていた取り組みに対する本市へのマイナスの影響が計り知れないと思います。今回、紀の川市の行政視察をさせていただいて、このように強く感じたところです。

5.むすびに

県議会の2月定例会で県は県産フルーツの情報発信拠点として、寒河江市の最上川ふるさと総合公園に飲食や学習機能などを備えた施設「フルーツ・ステーション」を整備する計画を立てていて、新年度当初予算案に関連事業費としておよそ4800万円を計上していました。この事業の総額は18億8000万円が見込まれ、3月13日に開かれた県議会農林水産常任委員会で「公費の負担が大きい」などとして否決されました。県議会で県が関連予算を撤回するのはおととしに続き2度目です。本市のみではなく、県内の各フルーツ産地においても、ポテンシャルのある場所へ同様に設置を促し、それらをネットワーク化する案であるにもかかわらず「なぜ寒河江なのか、うちの近くでダメなのか」という我田引水にような理由で撤回となったことについて、市民は「全く理解できない」「県知事選挙の政争の具されたことにはがっかりした。」「とてもがっかりし残念というより、むしろ呆れた」という声がたくさんございます。

残念ながら、サクランボの生産量が全国1位の本県で、歴史的凶作が現実になりました。昨夏の高温の影響で2つの実がくっつき、商品価値が落ちる「双子果」が激増、今年に入ってからの暖冬、多雨、高温がサクランボにダメージを与え、収穫高は昨年の半分との見方もあり、JA関係者は「歴史的凶作」を口にしながら、気候の変化に弱い山形サクランボの象徴「佐藤錦」は、別のサクランボに品種替えを余儀なくされています。 予想大幅に下回る収穫量となった今シーズンですが、「今年の収穫は例年の半分というのが大方の見方。歴史的な凶作と言わざるを得ない」とJA関係者が嘆いています。高級品種「佐藤錦」や「紅秀峰」、2年前にデビューして〝次代のエース〟の期待がかかる大粒の「紅王」ですが、今年は実の部分がくっついてハート形に見える「双子果」が多く、昨年夏の猛暑の影響とみられる。双子果の味は変わらないが、出荷量を保つため早めに摘果される。県園芸農業研究所によると、詳しいメカニズムは不明だが、花芽ができる8月中旬に高温が続くと、一つの花に雌しべが複数でき、双子果になりやすいとみられます。県内各地域のJAグループのリーダーたちも惨状を訴えており「昨年の43%しか出荷できない」「平年通りの出来だったが、収穫を急ごうにも人手がなく収穫できなかった」「異常気象から災害に変わった。収穫ゼロの農家もいる」などです。

JA関係者は吉村知事に、スプリンクラーなど暑さ対策の設備導入や、暑さに強い品種開発などへの支援を緊急要請し、知事も「サクランボは山形のシンボルで、地域経済にも関係する特別なものだ。意見を踏まえて対応する」と応じたものの、特効薬があるわけではない。長年サクランボ王国・山形を支えてきた「佐藤錦」について、「(別の)品種に入れ替えないといけないかもしれない。ただ、全国で圧倒的なシェアを誇る山形のサクランボを守り続ける」山形サクランボの作付面積の70%を占める「佐藤錦」は、甘みと酸味にバランスが良く、色づきも美しいため抜群の人気を誇る。だが、猛暑や暖冬、多雨、雹害といった気候の影響を受けやすいとされる。〝寡占的な栽培〟で危険分散できず、今年のような「凶作」を招いたともいえます。歴史的な凶作に見舞われた山形サクランボが、大きな岐路に立たされています。

今回の行政視察で、フルーツ・ツーリズムの前提となる果樹栽培の難しさを痛感いたしました。また、フルーツ・ステーションのような情報発信基地の必要性を強く感じました。さくらんぼ情報が消費者に伝わっていないがために、今シーズンはさくらんぼパニックが起きたからです。こうしたことは、絶対に避けなければなりません。

最後に、「ピンチをチャンスに!」この言葉は、長年お世話になっています市内の社会奉仕団体の名誉会長が、経営者である会長が株価急落でどん底に突き落とされ同じような経験を踏まえ、生産農家の苦悩をねぎらって話されました。さくらんぼがなければ、寒河江市の全産業が衰退の一途を辿ってしまう可能性は否定できません。

今こそ、私たち議会を含め、全市民の英知を結集して、この難局を乗り切っていくしかありません。私も、その一人として、全力で活動してまいります。

(写真 紀の川市議会議場にて 筆者は右端)