視察先 :沖縄県那覇市
視察内容:「小中学生への平和教育」「こども誰でも通園制度」について
1.はじめに
1972年(昭和47年)5月15日、多年の要求であった祖国復帰が実現し、日本国憲法が適用される中で、那覇は沖縄の県都として都市基盤が一層整備され、今日人口32万、市域面積39.98平方キロメートルの近代都市となっています。現在、2018年(平成30年)に制定された第5次総合計画「なはで暮らし、働き、育てよう!笑顔広がる元気なまちNAHA~みんなでつなごう市民力~」に沿って、21世紀にふさわしい都市の実現に取り組んでいます。
この度、会派行政視察研究先として、那覇市議会様を通じて教育委員会様及びこどもみらい課様から標記の研修項目でご教示を賜りました。以下、要点を簡潔にご報告させていただきます。
なお、訪問させていただきました10月10日は、奇しくもじゅうじゅう空襲の日で、沖縄戦で多くの死者が出た悲しい日でもありました。
2.視察項目
⑴ 小中学生への平和教育について
那覇市平和宣言 「生きぬき築きあげた都市」
那覇―その戦後は
米軍のバリケードで囲まれた焼け野が原から出発した
はじめに103人の市民が生きぬいてもどった
なつかしい壷屋のまちに
多くのいのちを失い
ふるさと那覇も消滅し
悲しみは深かったが
打ちふるう復興の鍬には力があふれ
みんなまなこを
しっかり前へ向け
踏み出した
生活と都市再建への一歩を
それから
心のいしじを固く敷きつめ
平和通りをつくり
国際通りを開け
もうニ度と失うことのない
那覇を築いてきた
ここにくるまでに50年
103人は31万人へとかわった
那覇―それは戦争をしない都市
那覇―それは市民の愛が守るまち
那覇―それは市民が主人公の都市
那覇―それは世界の都市を友とするまち
私たちは いま、ここに
市民の誇りと勇気により蘇った
都市・那覇を世界に宣言する
1995年・沖縄戦終結50年宣言 那覇市
①平和教育
平和教育担当教諭向け研修
毎年5月に対馬記念館にて、沖縄戦体験者による講話、対馬丸記念館の利活用、施設見学、周辺慰霊碑・顕彰碑見学、情報共有などを実施している。
②平和学習
6月に平和月間・平和旬間を設定し、慰霊の日に係る平和教育の取り組みを重点的に実施している。平和集会、平和資料展示、映画やDVDによる視聴、校内放送、慰霊塔や戦跡巡り、教科等新聞記事の活用、平和の礎刻銘者500名分を各学校のリモートでつなぐ、JICA沖縄の講師から講話、他県の中学生との交流などを行っている。
③絵画コンテスト
沖縄県平和祈念資料館主催「児童・生徒の平和メッセージ」作品募集に応募
④パネル展
那覇市総務部平和交流・男女参画課 平和に関するパネル展開催
「平和の大樹」に係るメッセージカードに応募
応募されたメッセージを市役所1階に展示
⑤交流事業
「那覇長崎平和交流事業」中学生対象に実施
「対馬丸平和学習交流事業」県内小学校5~6年生、中学生及び保護者参加
⑥先進自治体の紹介
埼玉県和光市 沖縄戦の平和学習を実施
⑵ こども誰でも通園制度について
①試行的事業による実績
「こども誰でも通園制度」とは 国が創設を目指す「こども誰でも通園制度」は、保育所などの利用要件を緩和し親が就労していなくても時間単位などで子どもを預けられるようにする新たな通園制度です。 新たな制度は、子どもにとっては保育の専門職がいる環境で家庭とは異なる経験ができたり同世代の子どもなど家族以外と関わる機会が得られたりするほか、親にとっても育児負担の軽減や孤立感の解消につなげることなどが期待されています。
那覇市の試行モデル事業実施
久場川みらいこども園
一般型 0歳から4歳児 1時間300円負担だが2024年度は無料
選定理由 一時保育の実績とノウハウあり
2024年8月1日から2025年3月1日 予定
自由利用なし 通園利用として定員44人
98人応募で優先順位をつけて選抜
②予算 沖縄振興特別推進交付金により2015年・2016年に実施
沖縄戦体験者へのインタビュー映像を個人別証言として編集
業務委託先 琉球朝日放送
個人別証言記録
2015年 31名 2016年 24名
③本格実施に向けた課題
10時間上限の是非
利用料金 設定
食事提供、おやつ提供
キャンセル対応
キャンセル待ちへの利用
職員配置と人材確保
研修及び検証を踏まえた対応
3.資料
識者の意見(NHKホームページより抜粋)
大阪教育大学 小崎教授
「『こども誰でも通園制度』は本当の意味で保育を必要としている人たちに門戸が開かれたという見方もできる。ただ、通常の保育は、1週間継続をするなかで、子どもたちの成長や発達を保証するものだ。『こども誰でも通園制度』は、今までの保育の前提とは違う、大きな変更だと感じる。制度設計がまだ見えない点も相まって、現場は不安感、負担感を感じている。疲弊した保育現場を知ってもらい、そのうえでモデル事業を通して十分な検証と現場への説明が必要だ。」
4.所感
「こども誰でも通園制度の試行」は、山形県では山形市のみですが、本市で実施可能かどうかニーズの調査も必要です。
「平和教育・平和学習」は、タブレットを使用して、ユーチューブの動画配信で可能であり、さらに沖縄県自治体教育委員会との連携で交流も盛んにおこなわれており、本市の小中学校でも積極的に実施していくべきです。そのために、先生方の現地研修や修学旅行地へ誘いなど早急に行い、課題を克服しながら実現に向けて、今後さらに前へ進めていくべきです。
5.むすびに
今回の行政視察地となった沖縄訪問は、人生で2回目の有意義なものとなりました。 それは、沖縄県那覇市を視察させていただき、平和教育と子育て支援策について先進事例をお聞きできましたこと、本市の平和行政および子育て支援対策などに大変参考になりとても勉強になりました。とりわけモデル事業試行における貴重な研究資料をご提供くださいましたことに、改めまして心から御礼申し上げます。
最後になりましたが、那覇市議会事務局様、那覇市教育委員会様、こどもみらい部様におかれましては、大変御多忙のところ快く私どもの行政視察の受け入れをいただきましたこと、衷心より感謝申し上げます。ありがとうございました。
那覇市役所にて那覇市議会事務局様、那覇市教育委員会様、こどもみらい部様よりご教示を賜る
那覇市議会議事堂にて 筆者は右端