視察先 :沖縄県地方自治研究センター
視察内容:「地方自治研究の成果と課題について」
1.はじめに
第2次世界大戦の敗戦から79年を経た今日、核のない平和な社会実現に向けた平和教育について、新聞報道によれば、米兵による 16 歳未満の少女への誘拐と不同意性交事件、すなわち昨年 12 月に米空軍兵長が、16 歳未満の少女を車で誘拐して同意なく性的暴行を加えたとして3月 27 日付で那覇地検が起訴していたことが明るみに出ました。 3月の起訴時点で事件を把握していた外務省及び沖縄県警は、沖縄県には6月 25日に報道があるまで3か月以上も情報提供をしていなかったというのです。
これまでも米軍人・軍属等による事件が発生し、今回の米兵による蛮行に激しい怒りと憤りを覚えるとともに、改めて国民、沖縄県民に強い衝撃と不安を与えています。
この度、本市議会に対し、沖縄県民の尊い生命と人権を守る立場から今回の事件に対し、厳重に抗議するとともに、県内在住の市民より「日米地位協定の抜本的改定を求める意見書の提出を求める」陳情が出されました。先日開催された総務産業常任委員会協議会におきまして、討論ののち、委員長を除く委員の採決の結果、賛成少数により、今議会において審査しないことになったことは、非常に残念でなりません。 全国知事会や本県の県議会を含む245の地方議会において採択され、意見書を提出しているからなおさらです。先日には、鶴岡市議会において全会一致にて、採択されたことについて、市民の皆様にしっかりお伝えしなければならないと思います。
2.視察項目 沖縄県内の現状と課題
⑴ 米軍基地による騒音・悪臭等環境汚染について
①土壌汚染問題
米軍から返還された基地敷地からは、土壌汚染により高濃度の化学物質が検出されており、カドミウム、六価クロム、廃油などで上水道の水道水の安全が脅かされている。
②24時間騒音問題
嘉手納基地 一日50~60回
普天間基地 一日30回
120デシベルの騒音で悩まされる
幼児も戦闘機やオスプレイの音を聞き分ける
③落下事故問題
繰り返される機体落下の恐怖
④不発弾処理問題
いつ爆発事故が起きるかわからない
住宅建設の際、出てくることが多く、磁器検知器で地盤調査を行う
那覇空港にも多数埋設
⑤その他
火薬の残りが発見され泡消火剤も使用
⑵辺野古基地建設による自然破壊について
①サンゴ礁破壊
②白い砂浜が消滅
③豊富な資源と5,000種類の生物が危機
④自然学者・環境学者が強く警鐘を鳴らす理由
- 大浦湾側は深い谷底地形となっており、大規模な軟弱地盤が存在しています。
- 最も重要な地点の地盤調査が行われていません。
軟弱地盤が海面から90メートルの深さに達するB-27地点については、未改良地盤が残らざるを得ないにも関わらず、地盤の強度の把握を目的とした力学的試験すらも行われておらず、地点周辺の性状等が適切に考慮されておりません。 - 工事の方法は国内で初めてものです。
地盤改良として改良径2メートル及び1.6メートルの砂杭を、東側護岸の約1キロメートルに約1万6千本打設することとなっており、その打込深度70メートル以上に対応可能な国内のサンド・コンパクション・パイル作業船3隻すべて使用し、しかもそのうち2隻は改造が前提となるなど、前例のない大規模かつ高度な地盤改良工事を実施するものです。 - 設計の安全性が十分ではありません。
大規模な軟弱地盤が存在し、国内で前例のない大規模かつ高度な地盤改良工事を行うにもかかわらず、最も重要な地点の地盤調査が行われておらず、しかも、設計上の安全性が十分に確保されていないという問題があります。
⑶ 反戦・反基地・平和運動の前進に向けて
①日米地位協定見直しが必要
②沖縄から米軍基地移設を
沖縄県ホームページから
なぜ辺野古新基地に反対するか、4つの理由
- 既に異常としか言いようのない過重な基地負担を抱えていること。
- 辺野古移設に反対する民意があること。
- 辺野古・大浦湾の豊かな自然環境が破壊されてしまうこと。
- 辺野古移設では普天間飛行場の一日も早い危険性の除去にはつながらないこと。
3.資料
沖縄県の見解
沖縄県は、日米安全保障体制や自衛隊の必要性を理解する立場です。
沖縄県は、「基地のない平和の島」の実現を目指していますが、現在、次に示すような現存する多くの米軍基地・自衛隊基地の全てをなくすことを政府に要望しているわけではありません。
沖縄県には、普天間飛行場(米海兵隊)のほかにも、極東で最大かつ最も活発な米空軍基地とされる嘉手納飛行場(米空軍。面積約2千万平方メートル、長さ約3.7千mの滑走路2本)や、キャンプ・ハンセン(米海兵隊。実弾射撃訓練などの訓練地区を含み、面積約5千万平方メートル。)、キャンプ・シュワブ(米海兵隊。普天間飛行場を移設しなくとも、ヘリコプターの訓練や水陸両用訓練、実弾射撃訓練等を行うことが可能で、面積は約2千万平方メートル。)、牧港補給地区(米海兵隊。主に倉庫地区、隊舎地区、住宅地区からなる。海兵隊のみならず在沖米軍の整備・補給等の兵站基地としての役割を担っている。面積は約270万平方メートル。)、キャンプ・コートニー(米海兵隊。有事に際し空陸一体となった即応作戦を展開する実戦部隊が配置。面積は約130万平方メートル。)、キャンプ・瑞慶覧(米海兵隊。海兵隊基地司令部等が使用し、海兵隊の中枢機能を有している。面積は約5百万平方メートル。)、トリイ通信施設(米陸軍。グリンベレー部隊などが駐留。面積は約190万平方メートル。)、那覇港湾施設(米陸軍。港湾施設を有し、揚陸艦等が利用。面積は約60万平方メートル。)、ホワイト・ビーチ(米海軍。長さ850メートル及び450メートルの二つの桟橋を持ち、面積は約150万平方メートル。)など、31の米軍専用施設があり、その総面積は約1万8千ヘクタール、本県の総面積の約8%、沖縄本島の約15%の面積を占めています。国土面積の約0.6%しかない沖縄県に、全国の米軍専用施設面積の約70.3%が集中しています。
また、陸上だけではなく、沖縄県及びその周辺には、水域27か所、空域20か所が訓練区域として米軍管理下に置かれています。
さらに、本県には、米軍基地だけではなく、F15戦闘機40機程度などを有する航空自衛隊那覇基地をはじめ、55の自衛隊施設(総面積約780万平方メートル)が存在しています(令和3年3月末時点)。
安全保障は我が国全体の問題です。安全保障が重要であるならば、その負担の在り方も我が国全体で考え、分かち合う必要があります。沖縄の過重な基地負担は軽減される必要があり、沖縄にこれ以上新たな米軍基地は必要ないと考えています。
4.所感
本市の市議会3月定例会及び9月定例会に県民から下記の内容の(第1号・第5号)陳情が提出されました。
総務産業常任委員会では、両陳情についていずれも審議すべきでないということを多数決によって決定しましたが、私は審議すべきと賛成討論を行いました。
なお、この陳情第5号については、石破新総理が支持・主張している内容であり、鶴岡市議会においては、先日9月議会で全会一致にて願意妥当として、採択しているものです。
〇陳情第1号
陳 情 書
地方自治と沖縄の自己決定権を尊重し沖縄県との十分な対話で基地問題の解決に臨むことを国に求める意見書に関する陳情
陳情趣旨
2023年12月20日、最高裁は国が県知事の権限を奪う代執行を認めましたが「国と地方は対等」と位置付けられた地方自治法の理念と沖縄の人々の自己決定権を蔑ろにした理不尽な判決は令和の琉球処分と揶揄されています。2024年1月「日米政府は沖縄への軍事植民地支配をやめよ」とノーベル平和賞受賞者、映画監督など欧米の有識者400名が署名した国際声明文が日米両政府と国民に宛て提出され、辺野古移設問題は自然環境や人権問題の観点からも世界の良識のある人々から注目されています。安全保障が国の役割であっても自治体に理解を求め対話で問題解決を図るべきです。一日も早い普天間飛行場の危険性除去の実現が社会公共の利益であるならば、早期に完成が不可能であり工費が無限に膨らむ辺野古への移設が唯一の解決策であるのか立ち止まって考える必要があります。
裁判官は判決要旨で「沖縄では地上戦が行われ、多くの県民が犠牲になったことや、戦後も銃剣とブルドーザーにより米軍基地が建設されていった歴史的経緯などを踏まえれば、県民の心情は十分に理解できる」と述べ、そして更に「国としても県民の心情に寄り添った政策実現が求められる。普天間飛行場の代替施設を巡る一連の問題に関しては、国と県とが相互理解に向けて対話を重ねることを通じ抜本的解決の図られることが強く望まれる」と付言しました。しかし 2024年1月10日、政府は沖縄県知事の対話の求めに応ずることなく広大な軟弱地盤を抱える区域の工事に着手を強行し沖縄の苦難の歴史にいっそうの苦難を加えました。日本国民は周知のことですが、80年前の戦争では「本土防衛」のために沖縄に日本軍の基地が建設され凄惨な戦場になりました。
今も不発弾と戦争犠牲者の遺骨が土の中から発見されています。戦後、米軍統治下では銃剣とブルドーザーで無理やり米軍基地が建設されましたが、沖縄では日本政府によって今もそれと同じことが繰り返されているのです。しかし私たち日本国民はそのような過ちを二度と繰り返さないために憲法を有しています。国はこれを遵守し、地方自治法と憲法13条、14条に示されている人権及び沖縄の自己決定権を尊重し全ての国民に寄り添った政治を行い、沖縄県との対等な対話により問題を解決するよう求めます。
以上の趣旨から、下記事項についての意見書を国及び関係機関に提出することを求め陳情致します。
陳情項目
- 地方自治法を遵守し沖縄県との対等な対話により問題解決に臨むこと。
- 沖縄の自己決定権を尊重し軍事植民地支配をやめること。
令和6年2月21日
沖縄に応答する会 代表 漆山ひとみ
〇陳情第5号
陳 情 書
国民の命を守るために早急に日米地位協定の抜本的改定を求める意見書の提出についての陳情
陳情趣旨
在沖米軍米兵による「16歳未満の少女に対する誘拐性暴力事件」が昨年12月にあったことが、今年6月の沖縄慰霊の日の後に、報道で明らかにされました。なぜ沖縄の少女がこのような目に遭わなければならないのか。これまで幾度となく起きる事件・事故のたびに問われてきた沖縄の基地過重負担の是正、日米地位協定見直しをなおざりにし、基地がある故に再発する事件・事故を防ぐことのできなかった私たち大人に責任があるのではないでしょうか。更に米軍関係者の性暴力事件が、昨年以降5件も沖縄で発生していたことが最近分かりました。「被害者のプライバシーを守ることを口実」に、事件が沖縄県と県民に速やかに報告されず隠されていたことにより、さらなる事件が起きました。性暴力は人格を否定し、人間の尊厳を破壊する犯罪であり、被害者は今もPTSDに苦しんでいます。行政機関にはこのような事件から子供たちを守る責任があります。
事件・事故のたびに、国民の命と安全を守るべき国は、「綱紀粛正と再発防止」を言ってきましたが対策に実効性がなく一向に事態は改善されておらず、「加害者米軍・米兵に特権を与える理不尽な地位協定の実態」があからさまになっています。
沖縄では復帰後に、米軍関係者が6,235件検挙されています。うち殺人や不同意性交などの凶悪犯は586件。戦後79年経ても基地がある故に命が脅かされ、人権が蹂躙され続けている沖縄の状況は、安全保障問題は国の専管事項だと、そのままにしてきた地方議会にも責任があります。
8月13日、沖縄国際大学での米軍へリ墜落炎上事故から20年です。機体の破片は半径 300メートル、住宅密集地など50か所に飛散し、現場は事故直後から7日間米軍が封鎖、大学学長の立ち入りや消防・警察の現場検証まで拒否され、日本の主権が侵害され、大学が米軍の占領下に戻ったのでした。
沖縄県には31の米軍専用施設が有り、20 年間で595件の米軍機関連事故が発生。安全保障の問題が国の専管事項ならば、政府が率先して責任を持ってこの不平等で理不尽な地位協定の改正に乗り出す義務があります。そして基地周辺地域住民が安全安心に暮らす権利と地方自治を尊重し沖縄県を交えて話し合いが求められ、独立国として日本の主権を守り、日本の法律や規則を米軍が遵守するよう「日米地位協定の抜本的改定」に向けた議論が必要です。地位協定を他国並みに (ドイツ、イタリア、韓国は改定済) 対等な関係の協定にすべきです。
2004年7月16日に、全国知事会が、日米地位協定の抜本的見直しを決議し、それを受けて「地位協定2-4-(b)で米軍が一時利用可能4施設」がある山形県は、12月17日議決しました。(日米地位協定見直し意見採択 36都道府県)また、2018年8月15日全国知事会は、「日米地位協定の見直しを含む『米軍基地負担に関する提言』」を行い、以後 245地方議会が意見書を採択しております。よって、貴議会も下記事項についての意見書を地方自治法第99条の規定により国及び関係機関に提出することを求め陳情いたします。
陳情項目
- 国会で早急に、日米地位協定の抜本的改定の議論をはじめること
令和6年8月21日
沖縄に応答する会 漆山 ひとみ
5.むすびに
今回の行政視察地となった沖縄訪問は、人生で2回目の有意義なものとなりました。特に、沖縄県地方自治研究センターを視察させていただき、自治体の課題に対する先進的な取り組みによって大きな成果を挙げられていることは、本市の平和行政および本市全体の市民との協働や環境対策など大変勉強になりました。特に。本年1月27日に石垣島大浜会館において開催されました「石垣自治研集会」における貴重な研究資料をご提供くださいましたことに心から御礼申し上げます。
最後になりましたが、全日本自治体労働者団体連合会沖縄県本部内地方自治研究センター様、自治労沖縄県職員労働組合様におかれましては、大変御多忙のところ快く私どもの行政視察を受け入れをいただきましたこと、衷心より感謝申し上げます。ありがとうございました。
沖縄県那覇市にある地方自治研究センターにてご教示を賜る