視察内容:「旧蜂巣小学校の利活用(多機能型障害福祉サービス事業所」について
1.はじめに
大田原市の概要 (市ホームページ及び配布資料より転載)
栃木県の北東部に位置し、関東平野の北端、東京から北に約150キロメートル、県庁所在地の宇都宮市からは車で約1時間。東西に長い形状を呈しており、市境の東側は県境として茨城県及び福島県と接しています。県東部には八溝山地が茨城県との県境に沿って延びるが、中央部-西部にかけては那須野が原扇状地の扇端付近にあたる平地が広がっています。一方河川では、市東部を南北に縦断する那珂川・なかがわ、市南部を東西に横断する箒川があります。大田原市街を流れる伏流河川・蛇尾川・さびがわは、市南部の福原地区付近で箒川に注ぎ、さらに箒川は佐良土の箒橋付近で那珂川へ注いでいます。清流那珂川のやなでつかまえた、あゆの塩焼きは、とてもおいしいとパンフレットにも記載されていました。
また、交通アクセスは、市西端部の野崎地区に東北本線 (JR宇都宮線)が通じており、野崎駅 (東京起点146.6 km)が設置されています。道路網では国道400号・国道461号が、大田原市街の中心で交差し東西南北へ延びています。その他黒羽市街、湯津上市街を縦断し那須烏山市方面へ通じる国道294号は、市内を那珂川に沿って延び、野崎地区には国道4号が南北に縦断しています。
産業は、農業が盛んで、米の収穫量、産出量及び品質は、関東地方トップです。特に、コシヒカリ、とちぎの星など食味について、市内の多くの農家が食味コンクールで入賞を果たしております。そのほか、果樹では梨、野菜ではいちご、アスパラガス、ネギ、トマトなどの園芸作物が盛んで、さらに栃木牛などの高級牛肉を生産しており、市場からも高い評価を得ています。市内の工業団地では、大手企業が生産拠点として立地しています。
そして、特記すべきは、国内外のフルマラソンランナーにとって聖地と言える、サブ3、サブ4のトップレベルでレースが可能な市民マラソン「大田原マラソン」で、陸上競技長距離ランナーにとって特に有名です。私の愚息も関東実業団の「コモディイイダ」所属時代に招待選手として招聘いただき、上位入賞をさせていただいたご縁があり、大変感謝申し上げます。
2.視察事項
大田原市では、小中学校の統廃合によって生じた廃校について、2012年度から随時活用者の募集を行っており、2020年度からは、市有財産のうち民間活力による効果的な活用が期待されるものを対象に「大田原市有財産活用民間提案制度」により、積極的な利活用提案の募集を行ってきました。現在まで、廃校となった10校、最近廃校になった2校の12校のほぼ全てにおいて民間事業者や市の担当部局において活用がなされております。
今回は、その中のひとつである「旧蜂巣(はちす)小学校」の利活用について、現地を訪れ、詳しく視察させていただきました。
説明
管財係 主事 加藤 大河 様
【質疑応答】資料に基づき、事前に質問し、当日ご回答いただいたもの
また、利活用すると決まってから事業が開始するまでに苦労したことがあれば教えてください。
【回答】
経過
苦労した点は、建築基準法の用途変更協議、消防法の避難路確保、非常用照明設備設置などです。予算は、7000万円かかったことです。特別教室について、優位な補助金の活用も行ってきました。
【回答】
アンケートやサンプリング調査は、実施していません。
【回答】
最初に東京に本社がある会社の倉庫の応募があったが、審査の結果、落選となった。営利目的だけでなく、地域とのつながりがある利活用ということで進めてきた経過があり、当該事業者が最高点数で落札した。
【回答】
大田原市公有財産貸借契約を締結しています。賃料は、無料です。特に、校舎の一戸建て全ての貸借であるため、水道光熱費は、すべて事業者負担なので、市の持ち出しはありません。
【回答】
すべて事業者負担ですが、大規模修繕については両者で協議の上、割合を決定しています。
【回答】
きわめて良好で、売り上げは伸びています。来客数に見合ったスタッフ配置ができていると思います。
【回答】
この事業者は、大変高評価を得ていて、今後も期待されている。特に、以前同校に勤務していた元教師が地域に住んでおり、信頼できる支援者となっていただいています。イベントなどの催しに市民を集めてくれます。
【回答】
障がい者の自立支援に寄与できるよう、さらに頑張っていく。
【当日質疑の特記事項】
- 集客力の強さの秘密
→ 経営コンサルタントを入れて経営計画を練ってきたことなどです。 - 公募によって利活用ができる理由
→ 公募の事前相談があり、その中でニーズを把握して、両者が契約によってうまくいくように進めていることです。 - 公募によって利活用ができる理由
→ 公募の事前相談があり、その中でニーズを把握して、両者が契約によってうまくいくように進めていることです。 - 木造建築で耐震補強しなくても大丈夫なのか
→ 耐震基準の構造計算では、平屋建てでクリアしています。 - 珈琲のおいしさの秘密
→ 自家焙煎の資格取得で2人が合格し、クオリティをさらに高めています。
3.大田原市市有財産活用民間提案制度における木造建築物の優位性
民間活力による効果的な期待される民間事業者の利活用提案について、RC 鉄筋コンクリート造の2階以上の校舎は、借り手が非常に少ないとのことでした。一方の木造建築物は、温かみがあるとともに店舗などに適しているそうである。旧蜂巣小学校については、第28回栃木県マロニエ建築優良賞を受賞しました。
以下、ホームページの記事です。
講評について、築120年を超える小学校の木造校舎を、カフェと菓子製造所を持った多機能型障害福祉サービス事業所として改修したものである。天井を抜き小屋組みを見せた吹き抜け空間をつくることや、一部の既存壁を撤去することで、明るく開放的で、あたたかい雰囲気の空間が生まれている。建具や腰壁さらに黒板、机、椅子などの家具にいたるまで再利用し、新規に導入、改変された照明などインテリア要素との調和が図られている。外観は昔の学舎の姿を残し、内部を新たな用途にふさわしい空間に改変する考え方で進められた。一方でギャラリーとして利用される旧教室群は、当時の教室の形態をそのまま受け継ぎ、展示・ワークショップなどに利用され、付属施設である体育館や特別教室と共に地域活動に貢献している。地域の人々に長く愛された木造校舎の改修事例として、また地域への貢献や地域活動への取り組みとして優れたモデルとなるものであり、マロニエ建築優良賞(※)に選考した。
栃木県、一般社団法人栃木県建築士会、一般社団法人栃木県建築士事務所協会、一般社団法人栃木県建設業協会、公益社団法人日本建築家協会関東甲信越支部栃 木地域会、公益財団法人とちぎ建設技術センター及び一般社団法人日本建築学会関東支部栃木支所で構成する「栃木県マロニエ建築賞運営委員会」は、美しい景 観に配慮したまちづくりに対する意識の高揚と建築活動の活性化を図るため、都市景観の形成、歴史・文化の創造及び建築水準の向上等に寄与するものと認めら れる建築物又は建築物群を表彰しています。
4.これまでの議会一般質問にて関連質問の議事録(抜粋)
⑴ 旧田代小、旧幸生小に加え、白岩小、醍醐小、三泉小の計5校が、寒河江川左岸から消滅し、市全体の均衡ある発展が不可能となり、当該地域の衰退に拍車がかかることについて(2023年12月4日 第4回定例会)
(渡邉議員)
小学校は、旧田代小、旧幸生小に加え、白岩小、醍醐小、三泉小の計5校が寒河江市の左岸から消滅し、市全体の均衡ある発展に逆行する、地域の衰退に拍車がかかるということについてでございます。西部地区公民館の議会と語る会、あるいは町会長連合会と議会の意見交換会等で、参加した市民の方、代表の方からも、「有害鳥獣対策で大きな不安を感じながら生活しなければならない。私たちの地域は市で見捨てるんだべ」というふうにおっしゃっています。この恐怖と隣り合わせで大きな不安を感じていることを言いたかったのだと思いますけれども、学校もなくなるんじゃないかというふうなことです。先ほど冒頭でも申し上げましたけれども、都市の正義と優生思想、このことをもって地方を壊すというふうなことが全国各地で行われているわけです。市民の会では、学校がなくなることは地域コミュニティーの中心を失い、人口減少はより進み、当該地域が衰退に向かう速度が速まってしまう懸念があることから、地域の声を反映させた地域振興計画を早急に策定すべきというふうに要望されていますが、市長の御所見をお伺いします。
(佐藤市長)
御案内のとおり、人口減少、少子高齢化などによって、地域コミュニティーの機能低下ということが大変大きな問題でありますので、我々としてもそういった取組を一層していかなければならないというふうに考えております。既に閉校となった田代地区、それから幸生地区について、もちろん見捨てるなんていうことは全くありませんで、逆に我々としては、学校が閉校になりましたけれども、やはりその地域を何とか活力ある地域として生まれ変わらせるための努力というものをしていかなければならないというふうに思っておりますし、御案内のとおり、田代地区では地域づくり計画というものを地域の皆さんからまとめていただいて、そして学びの里TASSHOを拠点として様々な交流促進の取組をしていただいております。
また、幸生地区においても、閉校の校舎については今、スケートボードの練習場、それから地域の農産物販売などということで、試験運用という形でありますけれども、今後さらに地域の皆さんの意見をお聞きしながら本格運用、さらにどういうことができるかなどについて検討する予定にしております。
御質問の地域ごとの振興計画については、各地域において課題を整理して、地域の将来ビジョンをまとめていただいて、ビジョン達成に向けて市と地域の役割を明確にして様々な取組をしていくということが重要であります。ちなみに、平成23年から平成27年までに新第5次振興計画というのをつくらせていただきましたが、そのとき、平成23年には市内8地区で地域の課題、その解決方策などをみんなで話し合うワークショップというものを開催していただいて、約200名の方が参加して、意見をまとめ、それを提出していただいて、この計画の冊子に、後ろのほうですけれども資料編として織り込ませていただいています。これは8地区の地域づくりの成果が出ております。そういったことを私はお聞きしたときにイメージしたのでありますので、今後その計画の必要性なども地域の皆さんと十分お話をさせていただきながら、地域計画が必要だ、つくりたいという地域の皆さんからの声をいただければ、我々としても十分支援して、つくっていただいて、さらに地域の活性化に一緒になって頑張っていきたいというふうに考えております。
5.所感
「廃校」とは、児童生徒数の減少や、学校の統合、廃止によって学校が使わなくなることをいいます。文部科学省の実施した「廃校施設等活用状況実態調査」によると、2001年度から2020年度に発生した廃校で施設が現存している7398校のうち、5481校(74.1%)が様々な用途で活用されているようです。(2021年時点) 活用内容は、公共施設や体験交流施設、福祉施設のほか、近年は創業支援のためのオフィスや地元特産品の加工会社の工場など、地域経済の活性化につながるような活用も増えています。
本市の学校統廃合計画については、市民の多くの反対があったにもかかわらず、中学校3校を新中学校1校(1000人規模の超マンモス校)に集約し、さらに西部地区の旧5校、現3校を高松小学校跡地に集約する計画です。その後、西根小・三泉小の統合、寒河江小・南部小の統合、寒河江中部小・柴橋小の統合など方向性は示されましたが、具体の計画は未定になっています。
今回の行政視察によって、本市の廃校となる校舎の利活用については、基本的には、地元の要望に応えうる事業者がいるかどうかです。本市の小中学校は、鉄筋コンクリート3階建てのものがほとんどであり、維持管理が困難で、貸借契約を求める事業者が極めて少ないことか推測されます。そのため、建物については、耐用年数が経過して危険なものから解体を余儀なくされることは間違いないため、災害時に指定避難所となる体育館などの必要な構造物を除き、撤去されるでしょう。
そうなると、教育施設として、公共用施設として、利活用が見込めないものについては、事業者を公募して貸借する方法はありますが、皆無であれば、更地にして屋外施設のみ維持するか、土地を売却する方法しかありません。
地域のかけがえのないシンボルで、文化やイベントの拠点であり、災害時の指定避難所となっている小中学校について、簡単に解体撤去できない重要な課題です。
すでに廃校が予定されている陵東中学校については、新病院敷地として解体撤去が決まっています。陵南中学校については、屋外施設について、新中学校のグランドとして再利用することも、先日決定しました。その他、陵西中学校については未定です。市立病院など学校以外の市有財産の跡地も未定です。
こうした計画がありながら利活用が未定であるものについて、できる限り早急に利活用計画の方向性を見出していくことが必要だと、強く痛感しました。
6.むすびに
この度の行政視察に際しまして、快く受け入れていただきました大田原市議会事務局議事係 高橋洋陽主査様 同じく 土屋大貴主査様はじめ関係者の皆様に心より感謝申し上げます。ありがとうございました。

